「語彙(ごい)」は英語で「ボキャブラリー」と訳されます。
日本語の「語彙」はとても豊かです。
「語彙」とは単に「言葉の数」のことではなく「言葉の広がり」や「言葉の厚み」と言えるものです。
語彙力が高くなればより細かいニュアンスを伝える言葉を選択できるようになるでしょう。
反対に語彙力が低ければ決まりきった言葉や子供じみた言葉しか使えず心許なく感じられ「損」をすることになります。
例えば
50代にもなって「マジで?」といっている人。
「愛くるしい」「可憐」「清楚」を全部まとめて「カワイイ」と表現している人。
「かっこ悪い」「カッコいい」「美味しい」「不味い」「高い」「安い」など全てを「ヤバイ」で表現する人。
このような人に知性を感じることができるでしょうか?
いくら良いことを語っていても言葉に重みがなく軽く見られてしまいます。
一方、会社の朝礼などでサラリと格式の高い表現を嫌味なく織り交ぜる人はいないですか?
同じ内容でも「きっちりしている」「頼りがいがある」と一目置かれる存在なはずです。
もくじ
語彙力を高めることは非常に効率の良い自己研鑽である
社会人は身だしなみや所作も能力の一つとして評価されることはご知の通りです。
同じように豊富な語彙を持ち、格の高い言葉を適切に使いこなせるビジネスマンは有能に見えるものです。
一方どれほど優秀でも語彙が乏しく表現力が貧困なら下に見られてしまいます。
これは本来、大変無益なことではありますが誰しも自分が受ける心象というものは客観的には判断できないものなのです。
しかしながらこのことを十分理解し、語彙を味方につけることができれば少ない労力で評価を引上げることができます。
もしあなたの語彙力が低く、もともとの能力は高い人なら「正当な評価」を。
そして語彙力が低く、世間並みの能力の人なら「実力以上の評価」を受けられるようになります。
語彙によって落ちた評価を能力で埋め合わせるのは大変な労力が必要です。
その一方で今まで手付かずだった語彙力は簡単に伸ばすことが出来ます。
『語彙力を高めるには読書が最も良い』というのは本当か?
語彙には、意味がわかる「認知語彙」と自身の生活で使いこなせる「使用語彙」があります。
確かに読書で「認知語彙」を増やすことができるでしょう。ただ読書で得られる語彙は”知っている”だけで”使いこなせる”というレベルにはありません。
語彙力を高めたいと考えている人はおそらく「使用語彙」の力を高めたいのではないでしょうか?
読書だけで「認知語彙」を「使用語彙」まで昇華することもできますが大変な読書量を必要とします。
仕事に追われている社会人が効率よく語彙力を高めるには読書以外の方法も取り入れることが不可欠なのです。
語彙を身につけるには実際に使うことが肝腎
「使用語彙」を身につけるためには読書などの”インプット”と同時に”アウトプット”をすることが近道です。
語彙力を高めるステップは下記のようになります。
- 自分の得意な言い回しを理解する
- 得意な言い回しを言い換える語彙を見つける
- 自分の得意な言い回しを使わないようにする
- 言い換えた語彙を積極的に使う
新しく覚えた語彙も使わなければ「記憶の棚」に置かれたままです。
積極的に使うことにより知見から知識となっていきます。
また読書やTV鑑賞、映画鑑賞などなどのように「語彙の無作為なインプット」を繰り返しても語彙が「記憶の棚」に置かれるまでも時間がかかってしまいます。
インプットとアウトプットを滞りなく行うためには、使うそのシチュエーションに合わせた事例集を手元に置いておくことを推奨します。
事例集があればメールを書いている時に置き換える言い回しを引くことができます。
また会話の後でも気になったフレーズを見直すことができるでしょう。
この作業を繰り返すことにより最短距離で語彙力を伸ばすことができます。
語彙力を鍛える人気のオススメ書籍 5選
効率よく語彙力を高め「できる大人と思われる」ためのおすすめの書籍をご紹介します。
『大人のための言い換え力』 石黒 圭
語彙力が最も力を発揮するのはビジネスシーンでしょう。
豊富な語彙があれば「相手が理解できる形」で「自分の考えを伝える」ことができます。
伝える相手のことを考えない独りよがりな言葉では自分の思いを正確に伝えることができません。
正しく伝わらなければ「仕事のやり取りで言いたいことが伝わらない」「謝罪文で相手を怒らせてしまう」というような無用なトラブルに発展してしまいます。
この本では「適切に言葉を言い換える」ことにより日本語の悩みを解決する技術や発想を身につけることが出来ます。
知的に言い換える「話し言葉を書き言葉に」
電気がつく➡明かりが灯る
やわらかく言い換える「下位語を上位語」
無職です➡転職準備中です
おだやかに言い換える「不快な表現→丁寧な表現」
返事は不要です➡ご返信には及びません
他にも
・「難しい言葉➡易しい言葉」 わかりやすく言い換える
・「一般語➡専門語」 正確に言い換える
・「間接表現➡直接表現」ダイレクトに言い換える
・「直接表現➡感化表現」イメージ豊かに言い換える
・「婉曲的な表現➡率直な表現」素直に言い換える
・「冗長な表現➡簡潔な表現」シンプルに言い換える
・「物足りない表現➡十全な表現」言葉を尽くして言い換える
など、多彩な言い換えをメールや日常会話、ビジネス文書などですぐに使える多くの実例を元に解説しています。
『大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる』 齋藤 孝
語彙力とは「言い換え力」と言い表すこともできます。
できる大人と思わせる語彙は漢語と大和言葉です。
同じ内容でも豊富な語彙を使うだけで信頼感が増したり安心感を与えたりすることが出来ます。
この本では言葉を選ぶだけで「できる大人」としての評価を得ることが出来る漢語と大和言葉を駆使した「言い回し」「言い換え」をシーンごとに紹介しています。
各章ごとにシチュエーションに合わせた「言い換え事例」
「普段の会話で品よく見せる」語彙力ノート
・なるほど➡おっしゃる通りです
「お願いする」ときの語彙力ノート
・お願いして申し訳ございません➡お手を煩わせて申し訳ございません
「言いづらいことを言い換える」語彙力ノート
・あの人とどうも合わないんだよね➡あの人とはしっくりこないんですよね
「気持ちを伝える」語彙力ノート
・助けていただき➡ご尽力をいただき
会議・打ち合わせで「できる!」と言われる語彙力ノート
・いろいろと考えてみたところ➡勘案してみたところ
「訪問・宴会・手紙で使える」語彙力ノート
・そろそろ帰ります➡そろそろお暇させていただきます
センスが伝わる「季節の言葉」ノート
・春めいてきました
特に『会議・打ち合わせで「できる!」と言われる語彙力ノート』は発言に重みを与える非常に有用な例が多くおすすめできます。
『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』 吉田裕子
認知語彙と使用語彙
「多くの語彙を知っている人」はたくさんおられます。
なんとなく意味がわかる という語彙を含めて「認知語彙」とします。
身につけたいのは実生活の中で自然に使える本当にわかってる言葉「使用語彙」です。
しかしながら「使用語彙」は「認知語彙」の1/3〜1/5程度とされます。
本書では使えるシーンや難易度を考慮して「使える順」に記載し、また5段階評価の重要度(☆)も併記しています。
- 大学生やフレッシュマンは☆5をマスターして下さい
- 30〜40代は☆3〜4を自然に使えるようにしましょう
- ☆2以下は使用頻度は少ないですが認知語彙にできるようにしましょう
本書では正しい言葉や手紙やメールにふさわしい言葉遣い、自分を「知的」に見せる品のある語彙などを具体例を示し解説しています。
重要度の高いものから自分のものに出来るよう繰り返し開いて読めるよう工夫されています。
『ビジネスメール言い換え辞典』 村上 英記
ビジネスで必須となるメールスキル。
要件を正しく伝えることはもちろんですが失礼のない言い回しや定型文を使いこなせることも重要です。
メールは手軽に作成できる反面、相手の反応がわかりにくいというデメリットがあります。
書いた本人にはそのつもりがなくても「上から目線」「失礼だ」「わかりにくい」と言う印象を与えてしまうメールになっている場合も多々あります。
この書籍はメールの悩みを解消する言い換えを
「親しい人宛て」
「先輩や上司宛て」
「社外の人宛て」
など使う相手に合わせて3レベルに分けて解説しています。
先輩上司宛て 承知しました
社外の人宛て かしこまりました
先輩上司宛て 教えていただけませんか
社外の人宛て ご教授いただければ幸いです
先輩上司宛て 心よりお祝いを申し上げます
社外の人宛て 謹んでお慶び申し上げます
先輩上司宛て 頂戴しました
社外の人宛て 拝受いたしました
このように同じ言葉でも言い換えは多岐にわたります。
この本はメールでのやり取りを基本とした事例ですが実生活でも年齢や相手、状況に応じて適切な語彙を選択できるようになる助けとなります。
『できる大人のモノの言い方大全』 話題の達人倶楽部
この書籍には「モノの言い方」の代表的な用例が多数収録されています。
ご近所のかたとの朝の挨拶だけでも多数の選択肢がある。
また同じ曇でも、空模様の微妙な差異により言葉の使い分けが必要となります。
・どんより曇っているときには➡「はっきりしないお天気ですね」
・さらに曇って、空いっぱいに雲が広がっているときには➡「一雨来そうですね」
・雨が降り始めれば➡「あいにくのお天気で」
このようなフレーズを数多く使いこなせればコミュニケーションの一助となります。
この書籍には朝のあいさつにや営業活動、会議の仕切りに役立つ言葉を実践的に収録されています。
少し中身をご紹介
出来る大人は「社交辞令」が堂々と言えます。
社交辞令と聞くとネガティブな印象を受けますが社交辞令を社交辞令と感じさせない言葉選びを出来ることは大変な武器となります。
また不十分だったとしても「社交辞令が言えない大人」より「社交辞令が言える大人」の方がコミュニケーションが円滑に進むことは瞭然たる事実です。
話の「キッカケ」で使える天気と季節のあいさつ
いいお天気ですね
とくに話すことのない相手には、天気に関する話題をあいさつ代わりにするのが無難。この言葉は、日が射している日なら、一年中いつでも使える。一方、雨なら「あいにくのお天気で」、晴れたり曇ったり、雨が降ったり止んだりといったときには「はっきりしないお天気ですね」と言うのが定番。
ひと雨来そうですね
空が曇ってきて、いかにも雨が降り出しそうなときに使えるフレーズ。とくに、にわか雨が降ってきそうなときによく似合う。蒸し暑いときには、「これでひと雨来ると、涼しくなりますね」などと言ってもいい。ただし、梅雨どきや、毎日雨が降っているような場合にはやや不似合い。
ずいぶん蒸しますね
梅雨どきや夏など、蒸してジメジメするときに用いるフレーズ。本当は「蒸し蒸しして、いやですね」と言いたいところを、あえて「蒸しますね」でとどめる。〝マイナス言葉〟を用いないことで、不快な気分をあからさまにしないように配慮した表現。
親近感を持ってもらえる社交辞令のフレーズ
いつまでも、お変わりありませんね
年輩の人が、いつまでも元気なさまでいることを喜んで使うフレーズ。久しぶりに会った親戚のおじさんや、学生時代の恩師などが、めっきり老け込んでいることもあるが、そんなときもとりあえず口にしておきたい。本人が老いを自覚していないこともあるし、自覚していても「変わらない」と言われるのはうれしいもの。
その節は、たいへん勉強になりました
取引先など、目上の人から苦言や小言をもらったとき、後日、言っておきたいフレーズ。苦言に対する感謝の気持ちを表すと同時に、「言いすぎたかな」と不安に思っている相手を安心させる効果もある。なかなか会う機会がない場合、手紙やメールで使うのも手。
ご活躍との噂を伺っております
風の噂で、何となく動向を知っている相手に、お世辞をこめて用いるフレーズ。「お久しぶりです。独立してご活躍との噂を伺っております」などと用いる。まったく噂を聞かない場合や、悪い噂しか聞かない場合は、嫌味に聞こえかねないので使わないこと。
このようにほめる、謝る、反論する、もてなすなど一生使えるフレーズ辞典となっています。
まとめ
「頭がいいですね」
そんな褒め方をされてもうれしいのは小学生から高校生ぐらいまででしょうか。
目上の方に対しては、むしろマイナスの心象を持たれてしまう可能性すらあります。
「機知に富んでいますね」や「造詣が深いですね」という言い回しが無難な返答となります。
このような語彙・言葉がサラリと出てくる、そんな大人のビジネスマンとしてふさわしい表現ができる語彙力を身につけたいものです。
豊富な語彙は「正しく簡潔に伝える力」にもなります。
語彙が少ない人ほど話が長くなり、また話の趣旨が見えにくくなる傾向があります。
またストーリーを読み取る力も劣るため物事の本質が理解できず、すれ違いが多くなります。
語彙力を鍛え、伸ばすことは最初の段階では非常に容易です。
みなさんもこのスキルを手に入れ社会人として新たな躍進を遂げてくださいね。