バッテリーが上がったらブースターケーブルを使ったジャンプスタートが一般的でした。車両が2台必要なので車庫などでは始動できずJAF等のロードサービスを呼ばざる得ない状況も多々ありました。
しかし最近はバッテリーの高性能化・低価格化が進みリチウムイオンバッテリーを使った安価な「ジャンプスターター」が数多く販売されるようになりました。
ただリチウムイオンバッテリータイプのジャンプスターターにはこれまでの鉛バッテリーにはなかった注意点も多く選択には知識も必要です。
この記事ではジャンプスターターの選び方から、安価なジャンプスターター、JAF等の御用達のプロ用まで人気のジャンプスターターをご紹介します。
もくじ
格安ジャンプスターターはリスク覚悟で使う
格安ジャンプスターターに使われているリチウムイオンバッテリーは大電流を瞬間的に取り出すことができますが非常に不安定なバッテリーです。スマホやモバイルバッテリーが発火、発煙する事故も多数報告されています。ジャンプスターター用のバッテリーも過酷な使用で膨れたり、発煙することがあります。1度で破損することもあれば何度も使えることもあり個体差が大きいのも特徴です。
発火することはまれですが「何回でもジャンプスタートできる商品ではない」ということは留意しておいたほうがいいでしょう。
>>>非リチウムイオン電池のジャンプスターターの記事はこちら
セルモーターの消費電力
エンジンを始動させるセルモーターというのはみなさんが思っている以上に超強力なモーターなのです。金属部品の塊であるエンジンやシリンダー、クランクを「圧縮」がかかった状態で回転させる必要があるからです。
セルモーターの大きさはエンジンの排気量やエンジン型式により異なります。一般的に軽自動車で0.5kW(40A)、1500ccで1.0kW(80A)。2000ccで1.5kW(125A)程度のモーターが搭載されています。ディーゼルエンジンは圧縮が高いため乗用車でも3.0kW(250A)にもなるセルモーターが採用されています。
それぞれ40A〜250Aほどの電流値なのですがこれは無負荷の時の電流値です。
モーターの消費電力は負荷によリ変わるためエンジンスタート時にはこれの数倍の電流が流れます。
エンジンの状態と消費電力
セルモーターの消費電力はエンジンの状態で大きく変わります。
ホットスタート
最も消費電力が少なくなるのはエンジンが温かい状態でエンジンオイルも温まっており、シリンダーピストンにもオイルが残っているようなホットスタートです。例えば夏にヘッドライトをつけっぱなしで10分ほど放置した様な状態です。この場合は無負荷時の1.5倍程度の消費電力でセルを回すことができます。
コールドスタート
最も消費電力が大きくなるのはエンジンやエンジンオイルが完全に冷え切った状態で冬期など外気温が低くなればなるほどセルモーターへの負荷も高くなります。また長期間に渡りエンジンをかけておらずシリンダーやピストンにオイルが回っていない場合は更に厳しい状態となります。このようなコールドスタートでは瞬間的には無負荷時の5倍程度の電流が必要となることがあります。
ジャンプスターターと瞬間最大出力
市販されているジャンプスターターには300A〜1000Aまでの瞬間最大出力を謳う商品があります。それぞれ対応できる車両や状況が異なりますが基本的には大きい瞬間最大出力をもつ製品のほうが有利となります。
400Aまでのジャンプスターター
軽自動車のコールドスタート、中排気量までのホットスタートであればエンジンを始動できる可能性が高い商品です。このクラスのジャンプスターターはモバイルバッテリーがメインでジャンプスターター機能はおまけ程度に考えたほうが無難かもしれません。
700Aまでのジャンプスターター
中排気量ガソリン車のコールドスタート、ディーゼル車のホットスタートもできる可能性が高いジャンプスターターとなります。格安ジャンプスターターでも最低限これぐらいの性能はあったほうが安心です。
800A以上のジャンプスターター
大型乗用車やディーゼル車のコールドスタートも出来る可能性があります。安全保護機能を解除する「ブースト機能」を搭載した機種であればバッテリー性能の限界まで(限界を超えて)エンジンを始動させることができます。
ジャンプスターターの容量は重要ではない
モバイルバッテリーとは異なりジャンピングスターターは大容量であることはメリットとはなりません。最大電流に長時間耐えるほどの耐久性を持ち合わせておらずブースターケーブルも長時間のクランキングでは発火の危険がある細いものしか付属されなしからです。格安ジャンプスターターは数秒でエンジンがかかるようなシーンで活用するべきです。
エンジンを長時間クランキングするような使い方は格安ジャンプスターターには期待するべきではありません。そのような用途では信頼性の高い鉛バッテリータイプの本格ジャンプスターターをお使い下さい。
ピーク出力別の格安ジャンプスターター
始動性能に大きく影響を与える「ピーク出力」。ジャンプスターターはセルモーターの突入電流を超える最大瞬間出力が出せないと回し始めることができません。ここでは最大瞬間出力別に人気のジャンプスターターをご紹介します。
【300A】Arteck ジャンプスターター
AMAZONの人気ランキングでも1位をキープしているArteck ジャンプスターター。人気の秘密はまるでモバイルバッテリーのようなコンパクトさ。普段使いにも出来るジャンプスターター兼モバイルバッテリーです。
ロングセラー
販売開始から2年が経過したくさんのレビューや使用報告が確認できるため安心して購入できます。
24ヶ月保証
ジャンプスターターは極端に大きな電流を流すためバッテリーにとっては非常に過酷な製品です。販売期間が長く、販売数も多ので複数の不具合も報告されていますが24ヶ月保証によりカバーされる点は安心です。
モバブサイズ
大きさは135x75x20mmとスマートフォンやモバイルバッテリーとほぼ変わらない超コンパクトサイズ。USB端子(5V/2.1A)を一個搭載しモバイルバッテリーとしても活躍します。
【400A】Anker Roav ジャンプスターター
モバイルバッテリーで不動の人気を誇るAnker製のジャンプスターターです。
常に発火の不安のあるリチウムイオン電池ですがAnker製なら安心して使えますね。
18ヶ月保証
Ankerのモバイルバッテリーは18ヶ月の保証がついてきますが、このジャンプスターターにも同様に18ヶ月の保証がついてきます。
IPX5の防水性能
Anker Roavは「あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない」という防水性能を備えています。水没はダメですが少々の雨の中でも問題なく使えます。
9000mAhの大容量
大容量モバイルバッテリーとしても使える9000mAh。iPhoneなら3〜4回充電できるの大容量です。
【600A】Arteck ジャンプスターター
再度登場したArteckのジャンプスターターです。300A版はジャンプスターターというよりモバイルバッテリーとしての用途がメインでしたが600A版ではジャンプスタート性能が大きくアップしています。
ロングセラー
こちらも販売開始から2年以上経過している息の長い製品です。問題のある製品はどんどん淘汰されていくためロングセラーの商品は安心して買うことが出来ますね。
24ヶ月保証
ジャンプスターターとしては最長クラスの長期保証。めったに使わないジャンプスタートですから保証が長いのは安心です。
【700A】suaoki エアコンプレッサー搭載 ジャンプスターター
ポータブル電源でも人気のあるsuaoki製 エアコンプレッサー搭載 ジャンプスターターです。700Aのピーク電流をもつ高性能のジャンプスターターですがエアコンプレッサーを搭載し利便性を高めています。
年に数度の追加充電
二次電池としては自己放電が少ないリチウムイオンバッテリーですが、半年に1度ぐらいの補充電が必要です。ジャンプスターターの活躍の場はあまりないため基本的は緊急用として車に積んでおくことになります。いざという時にバッテリー残量切れになっていれば目も当てられません。年に数度はコンプレッサーとして使う機会があれば自然に充電も行うことになるでしょう。使用頻度を高める汎用性は機能の維持にも役立ちます。空気圧は最高150psi(10kgf/㎝2)まで対応しています。
安全設計
リチウムイオンバッテリーを安全に充電する制御回路、低電圧保護、逆接続保護、逆充電保護、火花保護、低温・高温保護など多数の安全設計を施し安心して使用・保管できます。また12ヶ月の長期保証を標準としています。
USB端子とLEDライト
USB(5V/2.4A最大)端子を装備しておりモバイルバッテリーとしてもご使用いただけます。またLEDライトを搭載しており暗闇の中での作業にも役立ちます。
【800A】suaoki ジャンプスターター
ポータブル電源など大容量リチウムイオンバッテリーが得意なsuaoki。
800A 14595mAhながら非常に安価なジャンプスターターをリリースしています。
800Aのハイパワー
ピーク電流800A、12Vガソリン車6.0L、ディーゼル車5.0Lまで対応ということでかなりのハイパワー。自動車はもちろんバイクや農機具、トラックなども一発始動できる出力です。
液晶画面搭載
バッテリーのステータスがひと目で分かる液晶画面付き。万一の接続ミスなども「ひと目で見てわかる」のは安心です。
【純鉛バッテリー】プロ用ジャンプスターター
コチラはJAFなども採用しているプロ用ジャンプスターターです。価格は高いですがジャンプスターターとしての信頼性は圧倒的に高くなります。
【570A】酒井重工業 スタートキューブ
JAFにも採用されている酒井重工業のプロ仕様ジャンプスターターです。モバイルバッテリーは製品とは異なり発火等の心配もなく確実な始動を発揮します。
純鉛シールドバッテリー
安価なジャンプスターターリチウムイオンバッテリーなのに対しスタートキューブは自動車に使われているものと同じ純鉛ドライセルシールドバッテリーを採用し確実な指導を実現します。
プロ用専用品としては最小最軽量
本体サイズは W165×L165×H95mm、2.5kg最世界最小最軽量です。
高い蓄電性能
満充電から1年の無充電期間があってもジャンプスタートが可能です。ただし半年に1回程度の充電を行うほうがバッテリーを痛めません。
極低温時でも高い始動性能
-40℃でもエンジンの始動ができる超低温性能。
【1600A】酒井重工業 スターティングパック
酒井重工業 スターティングパック。JAF全国ロードサービスが正式配備している最強のスーパーエンジンスターター/ポータブルバッテリーです。
サイズ: 248×280×128mm
重量:8kg
瞬間最大出力1600A
1600Aの最大出力は12V用 6000ccガソリンエンジン(ベンツ600・ポルシェ・フェラーリ等大型外車)や
4000ccディーゼルエンジン(チェロキー等大型RV・4tトラック・レジャーボート・12V工事車両)を連続始動できるハイパワーです。
高い蓄電性能
満充電から1年の無充電期間があってもジャンプスタートが可能です。ただし3ヶ月に1回回程度の充電を行うほうがバッテリーを痛めません。
長寿命バッテリー
適切な使用っで3年~5年の寿命があります。またサイクル寿命は80%放電深度で500回以上です。
極低温時でも高い始動性能
-40℃でもエンジンの始動ができる超低温性能。
まとめ
万が一のバッテリー上がりに安心なジャンプスターターはいかがだったでしょうか?リチウムイオン電池の進化でこんなにもコンパクトになったのは驚きですよね。
まだすこしリスクもある製品ですがコンパクトさとのトレードオフかもしれませんね。なお少し価格はアップしますが安全性の高いジャンプスターターやポータブル電源もあります。
これらを参考にぜひお気に入りのジャンプスターターを見つけて下さい。
バッテリーの負荷を減らすのであればLEDヘッドライト・フォグランプも効果的です。